プロの仕事に感動した話

ビッグモーターの不正が世間を騒がせています。顧客が中古車を安心して購入できるようにするという本分を忘れて私利私欲に走ったことが、現在の状況を招いていると言えます。

今回は、それとは反対に「本物のプロの仕事とはこういうものだ」と感じたお話です。

謎の頭痛

始まりは突然の片頭痛でした。

右の頭頂付近にズキズキとした痛みが走るようになりました。熱もなく、しばらくすればおさまるだろうと、横になったのですが、一向に治まる気配がありません。

痛みは徐々に増し、2〜3秒グーッと痛くなり、数秒〜数十秒痛みが消える、という周期の繰り返し。痛みのフェーズでは、目を閉じて顔をぐっとしかめないと耐えられない程の痛みが襲ってきます。

顔の表情は、普通→普通→苦悶→普通→普通→苦悶→ …と世界のナベアツ状態。しかし、冗談も言えないほど痛みが増して来ました。

ネットで検索すると、冷やすと良いとあったので氷を当てましたが効果なし。肩凝りが原因の場合、風呂にゆっくりつかると良いとあったのでやってみましたが、これもダメ。

歯を食いしばって何とか1日過ごしましたが、翌朝になっても症状が変わりません。部位が部位だけに、イヤな予感が脳裏をよぎります。

身支度もそこそこに、保険証と財布だけ握りしめ、頭を押えながら近所の内科医に駆け込みました。

病院①

向かった病院は、近所では人気のある内科・皮膚科の病院で、すでにたくさんの患者さんが待っていました。問診票を記入し、受付のベテラン女性スタッフに渡すと、「1時間半ほどお待ち頂きます」とのこと。痛みに耐えて待つしかありません。

仕方なくソファに腰かけると、ナベアツ状態の私をみて、何かを察した受付の方が声をかけてくれました。痛みの内容を説明すると、「看護師さんを呼ぶので、少しお待ちください」と言われました。ほどなく看護師さんがやってきて、一通り話を聞くと、「先生に聞いてきます」と言って、奥に入っていきました。

看護師さんはすぐに戻ってきて「ここでは、対処療法しか出来ない。この近くの脳神経外科を紹介する」と、連絡先を渡してくれました。すぐに電話をすると、たまたまキャンセルが出たとのことで、その日の午前中にMRI検査を受ける運びとなりました。

病院に入ってから、ここまでわずか数分です。受付の方の機転のおかげで、驚くほどの速さで専門医にアクセスすることが出来ました。

病院②

次に訪れたのは、個人経営の脳神経外科。痛みは続いたままですが、きちんとした脳の検査を受けられることで、気持ちは楽になりました。人生初のMRlを受けたあと、首の骨の形を見るためのレントゲン写真を撮り、診察を受けました。

現われたのは、スキンヘッドで強面な先生。第一印象は威圧感がありました。しかし、印象とは違って穏やかな話しぶりで、撮影した画像1枚1枚を提示しながら、もし異常があるとしたらどうか、私の場合はどうか、といった具合に分かりやすい。処方する薬についても、一つ一つどういう目的があって、どんな副作用があるかなど、丁寧に詳しく説明して頂きました

結論としては、脳には異常無し。ストレートネック等の骨の異常も無く、一安心ということでした。肩凝りにも関係した神経の炎症との診断。痛みを緩和するための薬を処方してもらいました。

しかし、頭痛とは別に一つ問題が見つかりました。脳に向かう4本の血管のうちの1つに動脈瘤が見つかりました。大きさは5mm程度で、危険とまではいかないが注意しなければならない大きさで、手術も検討するレベルだとのこと。

「こういうのは、この先生が得意なんだけど、紹介状書きましょうか?」と、大病院の脳神経外科医を紹介してもらうことになりました。診察の予約も手配してもらい、早速翌日に予約が取れました。予約を取る手続きに少し時間がかかったのですが、スタッフの方は昼休みも応対してくれて、病院の場所や受付の方法まで詳しく説明してくれました。

速やかに段取りをしてもらったおかげで、どうやって病院を探せば良いのか、手術をするのかしないのか、どんな手術なのか、などと不安に思いながら過ごす日々を送らずに済みました。

こちらの脳神経外科、先生だけでなく、スタッフの方々も全ての患者さんに親切で丁寧な対応をされており、全体として、ホスピタリティに溢れる病院でした。

病院③

翌日訪れた大病院では、画像のCD-Rを提出後、ほぼ予約時間通りに診察となりました。浅黒く日焼けしたイケメン中年といった感じの先生でした。

この先生も実に説明が丁寧で、A4の白紙を1枚取り出し、説明しながら一つ一つポイントを書き留めてくれます。また、手術をするとしたら、血管にどのような処置をするのか、赤と青のボールペンを使って手書きの図を書きながら具体的に説明をしてくれました。

説明が終わったときには、脳動脈瘤とは何か、リスクとその発生確率、発生確率を左右する要因、今後の方針などが図入りで整理された1枚のペーパーが出来上がっていました。これを持ち帰れば、誤解は生じにくく、家族に説明するのも容易です。

次回は、検査入院ということで、血管の詳しい状態を調べる2泊3日の入院を行うことになり、その予約をして帰宅しました。最初の病院に行ってからここまでわずか1日半です。

真のプロフェッショナリズム

人生初のMRIを受け、脳動脈瘤が見つかるという衝撃の事態でした。しかし、不安というよりは、潜んでいたリスクが見つかって良かったという安堵感と、医療関係者の方々の見事な対応に、むしろ心地良さを覚えました。

病院というのは忙しいのが相場で、「4時間待たされて、診察は1分」などと皮肉られることもあります。全国的に医師不足な状態が続いていますし、待たされるのも、丁寧な説明する余裕がないのも、普通のことだと思っていました。

しかし、今回かかわった方々の対応は期待を上回り、プロとしてのスキルや経験に基づき、患者に安心と信頼感を与えるものでした。

技術や知識に加えたプラスアルファの部分、すなわち人の生命や健康を守る使命感や、患者に寄り添う姿勢といった部分に真のプロフェッショナリズムを感じました。このような医療関係者の方々に出会えた幸運を喜びつつ、自身もそのようにありたいと感じた二日間でした。

(山口)

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