欧州AI規制、延期されなかった義務
こんな方におすすめ
- EU域内の顧客・取引先・従業員に向けてAIの出力を提供している方
- 自社サイトにAIチャットボットを設置している、または生成AIで作成したコンテンツを公開している方
- 「高リスクではないから当面は関係ない」と判断してよいかを確認したい経営者・IT責任者の方
- 社内のAI利用実態を棚卸しし、規制対応の優先順位を決めたい法務・コンプライアンス担当の方
- EU域内の応募者を含む採用選考にAIを使っている方
目次
- 1. はじめに
- 2. EU AI Actの全体像
- 3. Digital Omnibusが変えたこと、変えなかったこと
- 4. 日本企業が対象となる条件
- 5. 第50条の透明性義務
- 6. 制裁と執行
- 7. 実務対応 ── 何から着手するか
- 8. 結論
- 参考資料
内容紹介
2026年7月、EU AI Act(EU人工知能規則)の適用スケジュールが大きく変更されました。「Digital Omnibus on AI」と呼ばれる改正法(規則(EU) 2026/1744)が2026年7月24日にEU官報で公示され、7月27日に発効しています。これにより、採用・与信・教育などの分野で使われる高リスクAIシステムの義務は2027年12月2日へ、医療機器や機械に組み込まれる高リスクAIシステムの義務は2028年8月2日へと、それぞれ1年以上先送りされました。当初の期限であった2026年8月2日の、わずか6日前の出来事でした。
この改正は「EU AI Actが延期された」と広く報じられました。しかし、延期されたのは高リスクAIシステムに関する義務であり、規則全体ではありません。**AIとの対話やAI生成コンテンツの開示を求める第50条の透明性義務は、当初の予定どおり2026年8月2日から適用されています。** 禁止されるAI慣行、AIリテラシーの確保義務、汎用AI(GPAI)モデルの提供者義務も、それぞれ2025年2月2日・2025年8月2日から適用済みです。
さらに見落とされやすいのが、域外適用の広さです。EU AI Actは第2条第1項(c)により、EU域外に所在する提供者・利用者であっても、**そのAIシステムが生み出した出力がEU域内で使われる場合**に適用されます。EU域内に法人や拠点を持たない日本企業であっても、EU域内の顧客・取引先・従業員に向けてAIの出力を提供していれば、対象となり得ます。
制裁は軽くありません。第99条は3階層の制裁金を定めており、禁止事項への違反は最大3,500万ユーロまたは全世界年間売上高の7%、透明性義務を含むその他の違反は最大1,500万ユーロまたは3%が上限とされています。いずれも高い方が適用されます。
本ホワイトペーパーでは、Digital Omnibusによって何が変わり何が変わらなかったのかを整理したうえで、日本企業が適用対象となる条件、第50条が具体的に何を求めているのか、そして2026年8月2日の適用開始を踏まえて早急に着手すべき実務対応を解説します。「高リスクではないから当面は関係ない」という判断が、事実に基づいているかどうかを確認するための資料として活用いただくことを想定しています。
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