01|「クラウドにすれば安くなる」は本当か?
「クラウドに移行すればコストが下がる」──そう聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
一方で、実際にクラウドへ移行した企業の中には「思ったより安くならなかった」「むしろ高くなった」という声もあります。どちらが正しいのでしょうか。
結論から言えば、比較の仕方によって答えが変わります。
自社サーバー(オンプレミス)のコストを「サーバーの購入費」だけで捉えていると、クラウドの月額料金が割高に感じられます。しかし、サーバーを維持するために実際にかかっているコストを正しく洗い出すと、見え方は大きく変わります。
この記事では、自社サーバーとクラウドのコストを正しく比較するための考え方を解説します。

02|自社サーバーの「見えないコスト」
自社サーバーの費用というと、多くの方がまず思い浮かべるのはサーバー本体の購入費用でしょう。しかし、実際にかかっているコストはそれだけではありません。
ハードウェアの更新費用
サーバー機器には寿命があります。一般的に5年前後で更新が推奨されており、その都度まとまった費用が発生します。UPS(無停電電源装置)やネットワーク機器なども同様です。これらは導入時に一度払えば終わりではなく、数年ごとに繰り返し発生する費用です。
保守・運用の人件費
サーバーは置いておくだけでは動き続けてくれません。OSやソフトウェアのアップデート、バックアップの管理、障害発生時の対応──これらを誰かが担当する必要があります。
専任のIT担当者がいる場合はその人件費、いない場合でも「詳しい社員が片手間で対応している」ケースが多く、その時間は本来の業務から差し引かれています。外部のベンダーに保守を委託している場合は、その契約費用もかかります。
電気代・設置スペース
サーバーは24時間稼働するため、電気代は意外と大きな金額になります。加えて、空調で温度管理をしている場合はその費用も含まれます。サーバールームや専用ラックのスペースも、オフィスの一部を占有しています。
ソフトウェアライセンス
OSやデータベース、バックアップソフトなどのライセンス費用も見落としがちです。クラウドではこれらがサービス料金に含まれていることが多いため、比較する際には加算する必要があります。
障害時のビジネス損失
ハードウェアが故障した場合、復旧までの間は業務が止まります。部品の調達に数日かかることも珍しくありません。この間の売上機会の損失や、顧客への影響を金額に換算すると、決して小さくはありません。

03|クラウドの料金モデルを理解する
クラウドの料金が「高い」と感じる場合、料金モデルを正しく理解していないことが原因であるケースが少なくありません。
月額課金の仕組み
クラウドサービス(AWS、Azure、Google Cloud等)の料金は、基本的に使った分だけ支払う従量課金制です。サーバーの台数、性能、稼働時間、データ量に応じて料金が決まります。
自社サーバーの場合は「最大負荷に合わせた性能」を購入する必要がありますが、クラウドでは繁忙期だけ性能を上げ、閑散期には下げるといった調整ができます。
「高くなった」と感じるケース
クラウド移行後に「思ったより高い」と感じる場合、よくある原因は次の3つです。
| よくある原因 | 内容 |
|---|---|
| オンプレミスのコストを過小評価 | サーバー購入費だけで比較し、人件費・電気代・保守費用を含めていない |
| 必要以上の性能で起動 | 念のために高性能なインスタンスを選び、そのまま放置している |
| 不要なリソースの放置 | テスト用に作ったサーバーやストレージを消し忘れている |
1つ目は比較の問題ですが、2つ目と3つ目はクラウド側の運用の問題です。これらは適切に管理すれば改善できます。
04|コストを正しく比較するために
自社サーバーとクラウドのコストを比較する際に大切なのは、TCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)という考え方です。
TCOとは、ある資産を保有・運用するためにかかる費用の総額のことです。サーバーの購入費だけでなく、運用にかかるすべての費用を含めて計算します。
比較の際に含めるべき項目
| 項目 | 自社サーバー | クラウド |
|---|---|---|
| 初期費用 | サーバー・ネットワーク機器の購入、設置工事 | ほぼゼロ |
| 月額/年額費用 | 電気代、保守契約、ライセンス | 利用料金(従量課金) |
| 人件費 | 運用担当者の工数(兼務を含む) | 運用管理の工数(削減される部分が多い) |
| 更新費用 | 5年ごとのハードウェア更新 | 不要(クラウド側で対応) |
| 障害対応 | 自社で復旧。部品調達待ちが発生し得る | クラウド側の冗長構成で自動復旧される部分が多い |
5年で考える
サーバーの更新サイクルに合わせて、5年間のTCOで比較するのが一般的です。自社サーバーの場合、初年度にハードウェア購入費がかかり、毎年の運用費が積み重なり、5年後に再び更新費用が発生します。クラウドの場合は毎月一定の利用料がかかりますが、初期投資と更新費用がありません。
5年分の費用を並べてみると、「月額料金だけ見ると高い」と感じていたクラウドが、トータルでは安くなるケースは多いです。

05|まとめ
「クラウドにすれば安くなる」は、正しく比較すれば多くのケースで成り立ちます。ただし、それは自社サーバーの隠れたコストを正しく洗い出し、TCO(総保有コスト)で比較した場合の話です。
ポイントを整理します。
- 自社サーバーのコストは購入費だけではない。人件費、電気代、保守契約、更新費用を含めて計算する
- クラウドは「使った分だけ」の従量課金。適切に管理すれば無駄を抑えられる
- 5年間のTCOで比較すると、クラウドが有利になるケースが多い
- クラウドの恩恵はコスト面だけではない。障害対応の負担軽減、拡張性、場所を選ばないアクセスなど、運用面のメリットも大きい
コスト比較は、クラウド移行の判断材料の一つにすぎません。しかし、「何となく高そう」という印象だけで判断を先送りにしているなら、一度、自社サーバーにかかっている本当のコストを洗い出してみてください。
ワイズラボでは、YzNexus(月額定額ITコンサルティング)やワイズクラウド(AWS導入・運用支援)を通じて、クラウド移行のコスト試算からサポートしています。「自社サーバーを維持し続けるべきか迷っている」という段階でも、お気軽にご相談ください。

