Beyond 5G

このたび当社が、総務省の「Beyond 5G時代に向けた戦略的な知財・標準化、事業化等促進支援プロジェクト」支援対象者として採択されました。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin04_02000115.html

これを受けて、共同研究者の皆様とともに5Gの次世代のモバイルシステムにつながる技術開発に取り組んで参ります。

今回は戦略的な知財取得が目的となっているため、詳しい内容については割愛しますが、Beyond 5Gに向けて、超低遅延での映像を行う仕組みの開発と放送向けコンテンツ伝送の実証実験に取り組む予定です。

以下、Beyond 5Gについてご紹介します。

Beyond 5Gとは?

現在、携帯各社のサービスは4G(LTE)から5Gへと移行しつつありますが、”Beyond 5G”というのは聞きなれない言葉だと思います。これは、総務省が2030年代を目指して、5Gのさらに次の世代のモバイル通信に向けて策定した総合戦略に由来しており、昨年12月にはこの戦略を産官学の強力な連携で推進するため「Beyond 5G推進コンソーシアム」が設立されています。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000484.html

ちなみに、”Beyond 5G”というのは直訳すると”5Gを超えたさらに先のもの”という意味ですが、実際には”6G”と呼ばれることになるかもしれません。いずれにしても、世界規模で急速に進む社会全体のデジタル化の動きに追従していくだけでなく、将来的に日本がリードする立場になることを目指して掲げられた戦略と言えます。

Beyond 5Gの目指すところ

Beyond 5G

4Gの登場から約10年かけて商用化された5Gは、特徴的な機能で比較すると4Gのおよそ10倍の性能になると言われています。Beyond 5Gでは、次の10年でこれら5Gの特徴的機能をさらに10倍に高度化します。

4G5GBeyond 5G
商用化時期2010頃〜2020〜2030年代〜
通信速度・容量下り最大1Gbps程度
上り最大数百Mbps程度
下り最大20Gbps
上り最大10Gbps
アクセス通信速度は5Gの10倍
コア通信速度は現在の100倍
低遅延101ミリ秒程度の遅延5Gの10分の1の低遅延
同時接続10万台/平方km100万台/平方km5Gの10倍
Beyond 5Gにおける5Gの特徴的機能の更なる高度化

4G→5Gでかなり性能が向上したように思いますが、そこからさらに10倍を目指そうというのですから、かなり野心的な目標です。

また、社会実装においては、単に通信性能を高めるだけではなく、その高い性能を活用するための周辺機能も充実させる必要があります。Beyond 5Gでは、持続可能で新たな価値創造に資する付加機能として、以下の機能が挙げられています。

自律性AI 技術等を活かし、人手を介さず(ゼロタッチ)、あらゆる機器が自律的に連携し、有線・無線を意識せず即座に利用者のニーズに合わせて最適なネットワークを構築する機能。
拡張性端末や基地局が、衛星や HAPS(High Altitude Platform Station)等の異なる通信システムとシームレスに繋がり、また、端末や窓など様々なものも基地局とすること(ユビキタス基地局)で、至る所にある機器が相互に連動しつつ、海、空、宇宙を含むあらゆる場所で通信を利用可能とする機能。
超安全・信頼性利用者が意識しなくてもセキュリティやプライバシーが常に確保され、災害や障害の発生時でもサービスが途絶えず、瞬時に復旧する機能。
超低消費電力低消費電力化の技術開発がなされない場合、2030 年の IT 関連の電力消費量は 2016 年の 36 倍(現在の総電力消費量の 1.5 倍)となると考えられる。こうした電力消費量の大幅な増加に余裕を持って対応するため、現在の 1/100 程度の消費電力に抑えることを検討する必要がある。
Beyond 5Gにおける持続可能で新たな価値創造に資する付加機能

参考文献:『Beyond 5G推進戦略 -6Gへのロードマップ-』 (総務省)

超多数同時接続が実現されると、PCやスマートフォンだけでなく、家電やウェアラブルデバイス、住宅や建物設備、車、センサー、その他ありとあらゆる機器がモバイルネットワークに接続可能となります。いわゆるIoTですが、それらの機器を一つ一つ利用者が手動で設定していくのは大変ですので、”自律性”は重要な機能です。

また、商用のモバイル通信サービスは、基本的に利用者数の多いエリアから順にカバーを進めることになるため、山間部や海上、建物の中などでは電波が弱くなってしまうことがあります。”拡張性”によって、従来ではカバーが困難であったエリアが通信可能エリアとなり、新しいサービスが生み出される可能性があります。例えば、人が簡単に立ち入ることが出来ないような山間部や海上にセンサー機器を設置して、より正確な気象情報の把握や、動植物の生態把握などを行うことも可能となります。

あと消費電力については、5G基地局は4G基地局よりも電力消費が大きいうえに、5Gでは同じ面積をカバーするのに4Gよりも多くの基地局が必要とされています。また、通信の高速化に伴いサーバや端末の処理性能も向上させる必要があり、消費電力が増大します。対策を講じなければ、電力コストや環境負荷におけるデメリットが大きくなります。

詳しくは、Beyond 5G推進コンソーシアムのWebサイトをご参照ください。

5Gのその先に向けて

Beyond 5G推進戦略の基本方針に「市場シェアの3割程度を獲得」という目標が掲げられています。

ここ10年でスマートフォンや基地局などのモバイル関連市場は大きく拡大していますが、日本企業は残念ながら存在感を発揮しているとは言えません。

スマートフォン市場シェアで、2009年には10位以内に日本の企業が4社(ソニー、富士通、NEC、シャープ)ランクインしていましたが、2019年には10位以内から姿を消しました。基地局の市場では、Huaweiが急激にシェアを伸ばしている一方で、日本勢2社(NEC、富士通)が継続してランクインしているものの、この10年でシェアを伸ばすことが出来ていません。(※令和2年 情報通信白書のデータに基づく)

過去10年の苦しい状況を打開し、次の10年で日本企業にかつてのような競争力を取り戻したい。「市場シェア3割」には、そのような強い意気込みが込められているように思います。

市場をリードするには、装置中心のいわゆるモノ作り的な観点だけではなく、Beyond 5Gの特長を活かした新たなサービスの創出や、超高速・低遅延に大量のデータを処理するためのソフトウェア技術なども大切で、それらを総合して利用者にどのような価値を提供出来るかの勝負になると考えています。

当社も、今回の取組みを皮切りに、Beyond 5Gと関わりのある様々な方々と連携させて頂き、Beyond 5Gの実現に向けて貢献したいと思います。

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